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Appleが環境重視の政策を取るきっかけは、環境団体グリーンピースの圧力が始まりだった

アップルの事例にみられるESGの広がり~Appleが環境重視の政策を取るきっかけは、環境団体グリーンピースの圧力が始まりだった~

公開日:2021年05月25日

1.環境面で先行するアップル

 世界的に環境への意識が高まっています。菅首相は、2020年10月に2050年までに温暖化ガスの排出量をゼロにする脱炭素を宣言しました。また、米国大統領ジョー・バイデン大統領は、再生エネルギーへのシフトをすすめる「グリーンニューディール」政策を公約に掲げています。
 近年、気候変動の増加や後述するESG投資(環境・社会・企業統治に着目した投資)の広がりで政府・企業の環境意識は、年々高まりつつあります。日本に比べて欧米などの企業は、いち早くからこうした取り組みを進めています。ITジャイアントと呼ばれるGAFAも先行しています。米アップルは、世界でトップクラスの時価総額の巨大企業として有名ですが、実は環境面でも評価が高い企業として知られています。

 2019年には、日本の環境省が循環型経済( CE、サーキュラーエコノミー)への取り組みを推進する「CEチャレンジ」を発足しました。さらに環境への取り組みのよい事例を表彰して国内外に広く普及を呼びかけるためのアワードで3団体(企業)を選出しました。
 この中でアップルは、再生可能エネルギーへの転換推進やリサイクル可能な製品づくりや取り組み、サプライヤーに対しての環境への配慮の呼びかけなどが評価され、アワードを受賞しました。
 アップルは2018年に世界各地の同社の施設でクリーンな再生エネルギーにより、すべての電力を賄う「クリーンエネルギー100%」を達成したと宣言しました。公益事業体と協力し、太陽光・風力発電のほか、バイオガス燃料電池、マイクロ水力発電などの技術を活用して多くの再生エネルギープロジェクトを運営しています。
 カリフォルニアの本社ビルの屋上には、太陽光バネルを敷き詰め、発電した電力を蓄電池などを活用し、効率的に利用しています。さらに2020年7月には、事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて、2030年までに気候への影響をネットゼロにすることを目指すと新たに宣言しています。

2.アップルが環境に注力するようになった背後には

 アップルははじめから環境への意識が高かったわけではありません。かつて2006年に環境保護団体のグリーンピースが技術産業で使用されている有毒化学物質についてのレポートの中でアップルを批判しました。「おしゃれで進んでいるイメージのあるAppleだが、その環境対策はイメージほどに先進的ではない」と述べ、アップル製品が有害物質を使用しているとして警告しました。
 また、2007年のグリーンピースが発表したランキング『Guide to Greener Electronics Ranking』では、アップルは最下位となりました。理由は、パソコンのMacで使われていた液晶モニターの光源の蛍光管に有害物質が含まれているというものでした。
 グリーンピースは、世界55以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に対し、環境問題の専門家として各国政府や企業へのアドバイスや提言を行っています。
 その後、アップルはグリーンピースの外圧もあり、環境対策に注力します。2013年6月にリサ・ジャクソン氏を、米国環境保護庁(USEPA)の長官という経験を活かし、環境・政策・社会イニシアティブ担当バイスプレジデントに任命しました。
  2015年には、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が、米カリフォルニア州に約1000億円を投じて、メガソーラー(大規模太陽光発電施設)を建設し、再生エネルギーへのシフトを進めると発表するなど環境対策に注力しました。
 これらの取り組みが評価され、2015年のグリンピースの再生エネルギーの利用を採点するレポートの「Click Clean Report」では、アップルはすべての項目で「A」を獲得しました。
 2017年には、グリーンピースのIT関連企業の環境保護への姿勢へのスコアランキングでアップルが3年連続で最高評価を得ました。

3.ESG投資開示スコア

 アップルの事例が示すように世界各国の企業の環境への取組みが加速しています。さらに環境だけでなく、企業の社会的責任や企業統治に対しても同様に意識が高まっています。す。これら環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)のそれぞれの頭文字からESGと呼ばれています。資産運用の分野でも、企業の財務や業績などの数値化されたデータだけでなく、環境問題への取り組みや株主、従業員、地域社会などの利害関係者(ステークホルダー)に対して社会的な責任を果たしているか、企業統治は適切に行われているかといった項目をスコアリングして投資を行うESG投資が広がりを見せています。
 ESGの投資開示スコアは、統一された算出方法はなく、評価機関ごとそれぞれ異なります。スコアの評価方法は、有価証券報告書やアニュアルレポートなどの開示情報を基にする方法や企業に対して多岐にわたる項目のアンケートに回答してもらい、スコアリングする方法で一般的です。
 これらにより算出されたESG投資開示スコアによる銘柄のスクリーニング方法として代表的なものに「ポジティブ・スクリーニング」と「ネガティブ・スクリーニング」があります。「ポジティブ・スクリーニング」は、ESG投資開示スコアの高い企業を業績にもプラス寄与が見込めるとの前提で投資対象とする方法です。
 一方、「ネガティブ・スクリーニング」は、倫理的や道徳的にマイナスとされるファクターの企業、たとえばたばこやギャンブル、軍事産業などを事業とする企業を投資対象から除外する方法です。また、最近では財務分析などの従来の投資判断にESG投資開示スコアを加味して、評価するESGインテグレーションと呼ばれる手法も一般的になっています。

4.ESG投資と投資パフォーマンスの関係

 ESG投資と投資パフォーマンスの関係には、諸説あります。湯山教授(東京大学公共政策大学院特任教授 )が2019年2月に公表した「ESG 投資のパフォーマンス評価を巡る現状と課題」の「我が国を対象とした ESG 投資と株式投資リターンに関する既存研究サーベイ」によると、総じてはポジティブな関係が存在するとの研究結果が多いように見受けられるとしています。ただし、無相関もしくはマイナスとする研究成果もあるためさらなる研究の蓄積が望まれると結んでいます。

 具体的には、2018年の研究ではBloombergのESG評価を使ってTOPIX(東証株価指数)構成銘柄を分析したところ、有意な差は見られませんでしたが2017年のみポジティブな結果が得られたとしています。また、2016年に東洋経済新報 社の CSR データベースのESG評価を用いた個別銘柄の分析ではポジティブな結果が得られました。

 さらに海外企業を対象とした「ESG 情報開示との関係に関する既存研究サーベイ」では、おおむね結果はポジティブなものとなりました。2018年にBloombergのESG評価を使用して英国の上場企業 350 社について、2004 年から 2013 年にかけての ESG 開示スコアと企業価値の関係について分析した研究の結果は、ポジティブでした。

5.まとめ

 いかがでしょうか?アップルの事例から企業の環境意識やESG投資への評価の高まりについて解説しました。資本市場においてもESG投資開示スコアの注目度は高まりつつあります。GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)は、日本株の一部をESG投資で運用しています。ESGスコアの良い企業を中心に組み込んだ株価指数(インデックス)もいろいろ開発されており、これに連動するETF(上場投資信託)は多数設定されています。資産運用や企業の持続可能な成長のいずれの面からもESGは外せないファクターといえるでしょう。

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