太陽光発電投資に関係する税金について
太陽光発電事業を行うにあたっては、さまざまな税制が関係してきます。ここでは最低限理解しておくべき、基本的な税制等について解説していきます。
1.消費税
まず消費税の納税方法を大雑把な解説をすると、消費税は、事業者が売上時に受け取った消費税から仕入により支払う消費税を控除して差額を納税するというものです。太陽光発電事業で言えば、売電収益には消費税を含めた金額で受け取っており、設備投資や各種のランニングコスト(税金等は除く)は消費税を含めた金額で支払っています。
消費税については、個人事業で太陽光発電事業を開始した場合、通常の消費税の納税義務はありません。しかし新規で太陽光発電事業を開始する場合、個人事業の開廃業等届出書を提出すると同時に消費税の課税事業者選択届出書を提出することで、消費税の納税義務を生じさせます。
ここで太陽光発電設備の取得を行った事業年度を考えると発電設備等に対する消費税(仕入消費税)の金額と発電事業を行うことによる売上に対する消費税の金額を比較すると、初年度に関して言えば、仕入れ消費税の金額のほうが大きくなるので、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を控除すると金額がマイナスとなり、この金額が還付されることになります。
この分、次年度移行については、消費税を納税する義務が発生しますが、上記の選択届出書を不適用にするこが、数年後にできる仕組みになっているため、不適用となった年度移行の消費税に関しては、消費税の納税義務はなくなります。
参考:新たに事業を始めたときの届出など
参考:[手続名]消費税課税事業者選択届出手続
参考:[手続名]消費税課税事業者選択不適用届出手続
注意点としては、太陽光発電設備は調整対象固定資産に該当し、課税事業者選択届出書を提出してから通常3年間不選択届出書を提出できない点です。また税制改正で、調整対象固定資産の範囲に、発電事業を行う権利についてもの対象に加えられており、ごく小規模な場合、権利が加算されたことにより、調整対象固定資産の対象となるケースを想定しているようです。
2.減価償却:償却年数・償却方法
発電設備は、償却年数については通常17年で償却している発電所を多いようですが、償却方法には注意が必要です。他の事業を行っていて、税負担を軽減したい場合は、定率法を選択することも考えられますが、通常発電効率は、20年で5%~10%低下するだけと言われているため、収益性が著しく低下することはありません。このため収益と費用の対応を長期的に一定化して、税負担を平準化するという観点でも、定額法を採用することをおすすめします。上場企業の減価償却方法を調査したところ、ほとんどの会社が定額法を採用しています。なので、税負担を短期間に少なくしたいというような特別な事情がない限り、定額法を採用すれば問題ないと思われます。
(参考)定率法と定額法の比較
定率法:毎期期首の未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計算方法です。このため取得から数年で多額の減価償却費が計上される。このため、取得から数年は、償却金額が大きくなり利益も少なくなり、税額も少なくなります。これに対して償却期間の終了近くになるとその分利益が大きくなりその分税額も増えることになります。
定額法:毎期均等額の減価償却費を計上する方法です。このため減価償却は毎期一定額となり、利益や税額が平準化されます。
また、償却単位ですが、できるだけ個別に認識可能な資産は別の資産として計上することをおすすめします。例えば監視カメラやフェンス等も発電設備一式で計上することも考えられますが、故障等で取り合えることを考慮した場合、個別に認識できる資産は個別に償却の単位として認識しておいたほうがよいでしょう。
参考:別表第二 機械及び装置の耐用年数表 電気業用設備 その他の設備 主として金属製のもの:17年
http://www.web-seibunsha.jp/tebiki/pdf/9/pdf_mask/huroku.pdf
3.所得税の分類
通常個人で野立太陽光発電所において発電事業を行う場合、所得税法上の事業所得となります。これに対して、住宅の屋根等に設置する場合の小規模な余剰売電の場合は、雑所得の取り扱いになります。雑所得に関しては、住宅の屋根等に設置するような小規模な太陽光発電設備の場合は、税額に影響しないケースがほとんどのため、申告していないケースがほとんどのようです。
4.償却資産税
毎年1月1日時点で、発電設備を所有している場合、発電所が存在する市区町村に償却資産税の申告を通常1月末(市区町村により異なります)までに申告する必要があります。初年度は、案内が送付されないため、ご自身で市区町村のWEBサイト等を確認する必要があります。申告すると、納付書が送付され4回に分けて支払う又は一括で納税する必要がります。また償却資産税については、税制優遇が利用できるケースがあります。中小企業庁のホームページを確認すると市区町村で減免措置を実施しているかについて確認できます。相当数の市区町村が対応しているため、設置を検討している場所の市区町村が該当しているか必ず確認しておきましょう。発電所の取得の前から手続きを準備する必要があるため、契約と並行して特例適用のための準備をすすめる必要があります。手続きについては、経営革新等支援機関の確認手続き等が必要なため、公認会計士・税理士等の専門家に任せる必要があります。
外部リンク:中小企業庁 経営サポート「生産性向上特別措置法による支援」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/seisansei/index.html
5.追加:マイナンバーカードを取得しておこう
マイナンバーカードを取得しておくと確定申告時や償却資産税の申告時に利用できるため、紙に記入するなどの手続きや郵送の手続を省略することができ、手続きがかんたんになります。郵送で申告書を提出する場合、封筒、切手の購入、封入、宛名記入、投函など工数が多いですが、電子申告ならパソコン一つですべて可能です。また控えを取得する必要がある場合返信用の切手と封筒も準備する必要がありますが、電子申告の場合、申告した履歴が残るため、手間や郵送コストを削減できます。もしまだマイナンバーカードを取得していない場合は、取得の手続きを必ず行っておきましょう。
外部リンク:マイナンバーカード交付申請 https://www.kojinbango-card.go.jp/kofushinse/