物件購入の流れ
太陽光発電投資について、どのような基準で投資対象を選べばよいのかわからず、投資を躊躇していた方も多いようです。今回は太陽光発電初心者のために、太陽光発電投資物件の購入の流れについて詳しく解説します。投資シミュレーションの作成方法、物件を選ぶポイントについても紹介しますので、今後の太陽光発電投資の参考になればと思います。
1.投資予算を考える
投資を考えるときにまず初めに考えるべきことは、総投資予算をいくらにするのか、どのように投資回収を図るのか、どの程度の利回りを期待するのかなどを決定しておく必要があります。太陽光発電投資の予算は、どれぐらいの規模の発電設備に投資するかということで決まってきます。
個人で投資する場合には、50kW未満の低圧の太陽光発電設備を購入する場合が多いですが、おおむね50kW前後の発電設備だと、相場は1千万円から2-3千万円になります。価格に大きな幅がありますが、これは、パネル枚数などの容量やFIT価格(固定買取価格)に応じて販売会社が価格を調整しているためです。
50kW以上の発電所になってくると、キュービクル(高圧受電設備)の設置に費用負担が生じるために、50kWを少し超えるぐらいの設備容量だとキュービクルの設置費用の投資回収に時間がかかります。そのため、高圧の太陽光発電所は少なくとも100kWから200kW以上の物件になってきます。投資額としては、数数千万~数億円規模になります。このように投資予算はかなり高額になってきますので、慎重な投資行動が求められます。
2.太陽光発電の投資と不動産投資との違い:回収方法の違い
次に、投資回収方法を理解しておく必要があります。これは不動産投資の場合と比較して考えてみましょう。不動産投資の場合、利回り5%の物件を購入して20年以上保有し続け、賃料収入のみならず、売却時の土地建物の価額も考慮して投資効果を判断します。一方、太陽光発電の場合は、売電できる期間が法律で決まっていますが、20年後以降にどの程度の売電収入が得られるかについては今のところ不透明です。また、土地を購入した場合には売電期間終了後に売却して投資回収することが可能ですが、まだ事例がないため、どれだけの価格で売却できるかの予測が難しい状況にあります。そのため、太陽光発電投資における投資回収は基本的に20年間の売電収入によって行うことを理解しておきましょう。
3.太陽光発電投資 物件購入の流れ
それでは、投資用の太陽光発電設備について、物件購入の流れを確認していきます。大まかな手続きとしては、物件を探索・調査する、物件の売買契約および土地利用権に関する契約を締結する、各種名義変更を行う、という流れになります。
3-1.物件を探索する
PRACRIを利用して物件検索をしてみましょう。エリアや利回りなどで絞り込んで条件にあう物件を探しましょう。設置に適した土地を所有しているなどの場合、ニーズ登録メニューから条件を登録してみましょう。複数の事業者から見積もりが届くので、比較検討がかんたんです。自動マッチング機能を利用すれば、条件に合致する物件情報が自動で届きます。
3-2.設置場所・設備仕様を調査する
太陽光発電の事業収入を決めるのは、場所と設備機器であるといっても過言ではありません。そもそも太陽光発電に適した場所なのか、そして太陽光発電の主要設備であるパネル(モジュール)やパワーコンディショナーは信頼できるものかを確認する必要があります。
設置場所についてまず最初に確認することは送電網からの接続地点と発電所との距離です。接続地点から発電所に送電線を接続するために、電力会社に工事負担金を支払ますが、この距離が長すぎる場合には、工事負担金が割高になります。特に、接続するために何本も電柱を立てなくてはならないケースについては、工事負担金が投資に見合っているか、販売価格が割増しになっていないかを検証します。
このほかにチェックするポイントとしては、特に近年では台風や大雨の影響をどの程度受けるかついては留意しておいた方が良いでしょう。洪水によって浸水してしまった発電所、流されてしまった発電所、また傾斜地に設置してあったために土砂がえぐれて架台杭がむき出しになってしまった発電所など、いろいろな被災報告がありますので、設置場所のハザードマップマップをチェックすること、そして地盤調査(ボーリング調査など)を事前に行っているかを施工会社に確認することは必須項目です。
設備については、パネル(モジュール)やパワーコンディショナーが特に国産でなければならないということはありません。中国製や欧州製のものも性能が高いものはたくさんあり、むしろ費用対効果の面では海外製が勝っていることもあります。しかし、問題なのはアフターフォローです。日本支店等がきちんとアフターフォローを対応してくれるのか、日本における代理店がしっかりした企業なのか、という点は事前に確認しておきましょう。
3-3.投資シミュレーション作成する
太陽光発電投資で最も重要なことは、投資シミュレーションを理解することです。太陽光発電の収入は売電収入のみです。経費はメンテナンス費用、土地賃料(売買の場合ローン返済)、固定資産税ぐらいのもので、売電収入のおおむね15%から20%程度です。つまり、売電収入をどのように算出するかが投資シミュレーションの鍵を握っているといえます。
売電収入の算出方法は、まずNEDO(新エネルギー・産業総合開発機構)のサイトから、年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)をダウンロードして、場所ごとの日射量データベースを取得します。 (NEDO Webサイトhttps://www.nedo.go.jp/library/nissharyou.html)
そして、発電所所在地に最も近い計測点の日射量データにアクセスし、パネルの角度および方角を入力して、月別の1日当たり・1㎡当たりの日射量を算出します。おそらく、3.0から4.2という値が各月ごとに算出されると思います。 そして次の計算式から月ごとの発電量を算出します。1日の日射量(kWh/(㎡・日))×太陽光パネル容量(kW)×月日数÷1(kW/㎡)(環境庁資料p34参照https://www.env.go.jp/recycle/report/h29-02/report_h29-02ref04.pdf)この算式で12か月分の発電量を計算し、それに損失係数をかけたものが実際の発電量になります。損失係数とは、パネルから発電された電力が送電線に伝わるまでの電力の損失を考慮した係数になります。例えば、パネルの変換効率、パワーコンディショナー損失、ケーブル損失、電圧変換ロスなどです。概ね75%から82%ほどを損失係数として見積もっているケースが多いようです。
3-4.金融機関に融資の相談をする
太陽光発電設備は動産ですが、近年では発電が安定していることが確認されているため、動産担保および売電債権担保を基に金融機関も融資を積極的に行うようになっています。このため、販売業者の提携ローンか、金融機関の融資かを選択することになります。さらに詳しい情報はこちら「融資のポイント」
3-5.契約締結手続きを行う
融資承認が得られた場合には、いよいよ契約手続きに進みます。主に契約書類は、発電設備の売買契約書、土地利用権に関する契約書(賃貸借契約書、地上権設定契約書、土地売買契約書のいずれか)、そしてO&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)契約書の3種類です。土地に関しては登記手続きもありますので、販売業者に相談しながら行います。登記については司法書士にお願いすることになりますが、土地の地目が「雑種地」になっているかは確認しておきましょう。特に地目が「農地」になっている場合には、工事着工前に、農地転用の手続きを地元の農業委員会に申請するようがあります、認可後に地目変更の登記を行うことになります。
3-6.各種名義変更手続きを行う
太陽光発電設備は動産のため、不動産登記のように所有権を公示する手段がありません。発電設備を自分が所有者であると証明する手段が経済産業省の「設備認定の変更届」です。
現在はオンライン化されているために、オンラインを通じて変更を行うことになります。(資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_change_d.html)
また、電力会社との電力受給契約および電力需給契約(いずれも「デンリョクジュキュウケイヤク」です)の名義変更も行います。これらも販売会社が代行する場合が多くなっていますので、用意された書式に必要事項を記入して提出すれば手続き完了です。この名義変更が終了すれば、晴れて売電事業開始の運びとなります。