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太陽光発電所の運営管理(O&M)

公開日:2021年02月19日

1.太陽光発電所のメンテナンス(O&M:Operation&Maintenance)とは?


 太陽光発電は、メンテナンスが不要といわれることがありますが、そんなことはありません。不動産投資の場合、入退去のときに清掃や鍵の交換などの不定期に発生しますが、太陽光発電投資の場合、主に草刈りと清掃の作業が発生します。不動産投資の場合、入退去の回数が増えるとその分費用と手間がかかりますが、太陽光発電投資の場合、定期的に発生することが予めわかっている内容が多いので、事業計画が立てやすく、事業上の不確実性が低いのが特徴です。メンテナンスは一切不要というのは、誤りですのでご注意ください。


1-1.草刈り


 発電所の敷地全体に防草シートを敷く場合は、草刈りは不要ですが、年に最低1回、できれば、2~3回の草刈りが必要になります。放置すると草が伸び放題になってしまい、パネルの高さよりも高く草が生えてしまう可能性があります。光線が太陽光パネルの近くで雑草が生い茂り、影を作るとそれが電気の抵抗となり発熱し、「ホットスポット現象」が起こります。ホットスポット現象がおこると、パネルの一部が熱を持ち故障の原因する可能性があります。
 故障だけでなく、最悪の場合漏電により火災が起きてしまうケースもあります。火災が広がってしまい、近隣の建物に燃え広がってしまったら大変なことになります。またこの雑草が原因のホットスポット現象は、一般的なパネルメーカーでは製品保証の対象外となっていることが多いため、草刈りは必ず行いましょう。

1-2.パネルの清掃


 パネルの表面は砂やゴミで汚れてしまいます。発電にも当然影響がありますので、草刈りと同じく定期的に清掃が必要です。年に1~2回は最低実施するようにしましょう。業務用の清掃ブラシ等で清掃するのが良いでしょう。発電量にも影響があるため、定期的に清掃を行うようにしてください。この際に、パネルのひび割れなどがないかについてもチェックしておきましょう。


1-3.パネルやパワーコンディショナーの検査


 数年に1度は、パネルやパワーコンディショナーについても検査が必要ですが、これは管理会社やメンテナンス会社に委託したほうがようでしょう。検査機器を購入することもできますが、利用頻度から考えて、レンタルや外注を利用したほうがよいでしょう。


2.自主管理のメリットとデメリット


 自主管理のメリットは、費用がかからないことです。低圧発電所の場合、管理会社等に委託すると月額1万円前後に草刈りの費用が5~10万程度とそれなりに費用インパクトがあるため、キャッシュフローにも影響を及ぼします。自主管理の場合、管理会社等に支払う費用と自主管理にかかる費用の差額分が浮くことになります。


 反対にデメリットとしては、やはり手間がかかることです。草刈りやパネルの清掃は、意外と重労働で、普段あまり体を動かしていない人は、確実に筋肉痛になります。またご自宅から遠隔地にある場合、ガソリン代又はレンタカーなどの交通費やメンテナンスに必要な道具を買い揃える必要がありますし、それを保管する場所も必要です。さらには、除草剤などの費用もかかります。


3.管理会社のメリットとデメリット


 管理会社管理のメリットは、自主管理とデメリットと反対に手間がかからないことです。管理会社に委託してしまえば、定期的にレポートが上がってくるので内容を確認するだけでよいです。年間の休日を数日使ってしまうのはもったいないと考えるかたは管理会社にまかせてしまうのがよいでしょう。メンテナンスは、太陽光発電所を購入した販売会社が行うケースもありますが、最近は草刈り・パネル清掃・機器の検査などを行ってくれる専門の会社も増えてきているため、複数の会社にあたって相見積もりをとることをおすすめします。反対にデメリットとしては、費用がかかることです。上記の自主管理で述べたように、月額1万程度と草刈りの費用がかかってきます。


4.自主管理か管理会社管理かの意思決定


 何を判断基準にするかで判断は人それぞれ異なってきますが、一般的に時間と費用で考えればよいでしょう。前提は規模の小さい低圧の太陽光発電所を前提としています。
 時間については、自主管理する場合、発電所が遠方にあれば移動時間もかかりますし、草刈りの時間もかなりかかります、管理会社に委託してしまえば、時間はレポートを読むことと報告を受けることぐらいなのでほとんど時間はかかりません。
 費用については、差額原価で考えましょう。外注した場合の費用の合計と自主管理した場合の費用の合計の差額になりますので、ざっと差額分を出して、これぐらいの差額なら、時間対費用を考えて、自主管理にする、または管理会社に委託するかを決定するとよいでしょう。厳密に計算したい方は、この差額原価を自主管理する場合の見積作業時間(厳密には差額時間、管理会社の場合時間をゼロとみなす)で割ってみてください。この時給単価が、1時間あたりの節約になる単価になります。移動時間まで考慮して考えると自主管理は割に合わないという判断になるかもしれません。また緊急時に駆けつけるという観点や専門性という観点で、一部だけは管理会社に任せるという考え方もあります。


5.防草シートの設置について


 防草シートを初期投資時に敷設してしまうのがよいですが、投資金額の圧縮のために自前で敷設することもできます。防草シートはホームセンターや通販で購入することができます。作業内容もかんたんで、杭と留め具を準備して、金槌で打ち付けるだけで誰でもかんたんに、敷設することができます。
 防草シートの耐久年数がさまざまなものがあり、耐久度合が長いほど価格が高くなるケースが多いです。張替え作業のことを考えるとできるだけ耐久年数が長いものを設置したほうがよいでしょう。
 ただ自分で敷設すれば費用は安く抑えられますが、きれいに敷設できない場合、隙間から草が生えてきたり、防草シートがめくれ上がってきたりして、その度に、草刈や補修をする必要があります。
 また台風や大雨で雨水が大量に発電所の敷地に流れ込むとシートが浮き上がったり、めくれてしまうことがあるようです。自分で設置するにせよ、委託して設置するにせよある程度のメンテナンスは必要となりますのでご注意ください。


6.フェンスを自作する


 防草シート以外にフェンスについても、自前でやろうと思えばできます。利回りアップのためには、自前でやるのも1つですが、防草シートを敷設するよりさらに大変です。土壌の質によっては、通販サイトで杭打ちの道具は売っていますし、フェンスについてもホームセンターや通販サイトで売っているので、自前でやろうと思えばできなくはないですが、これも大変な労力とコストがかかるので、各業者に相見積もりをとったうえで比較検討して業者に依頼したほうが無難です。


7.自分で敷設するか、業者に依頼するかの意思決定


 材料の調達コストを計算(複数のサイト等を参考にして、材料の原価をおおよそ算出する)し、防草シート、ピン、杭打機、フェンス、支柱などの材料の合計金額と業者に依頼した場合の見積もり費用を比較する。差額が作業時間などの労力に見合うものかどうか比較する。自作する場合は、融資を通常受けることはできないと考えたほうがよいので、手許のキャッシュがその分減少することになりますが、差額分が得になりますし、防草シートやフェンスに相当する融資についての金利も不要になります。


8.遠隔監視システムについて


 発電状況を監視できる遠隔監視システムは導入したほうがよいでしょう。機器のトラブルで発電が停止しても、遠隔監視システムを設置していないと、電力会社からの通知が来てはじめて機器が停止していことに気がついた場合、機会損失が発生してしまいます。遠隔監視システムの種類は、販売会社が取り扱っているものが数種類あると思うので、その中から選べばよいでしょう。できればパワコン1台ごとに発電状況がわかるものがよいです。こうすることで、発電所全体で見たときに、発電所の個別の発電状況がわかります。情報の粒度は設置する種類によりさまざまで、数分単位、1時間単位、1日単位、月単位、前年度比較などさまざまなタイプのものがあります。
 また異常が発生したときに、アラートメールを送信してくれる機能があるものもあります。遠隔監視システムのSIMの通信費は一括で数年分を払うケースが多いので、数年後にはまた通信費の支払が発生することになるのでこの点は留意が必要です。

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